気象と防災 マメ知識!

IBC岩手放送ホームページでは、広告・番組情報配信、閲覧履歴解析等のためにクッキーを使用しています。このお知らせを閉じるか閲覧を継続することで、クッキーの使用をご承認いただいたものとします。オプトアウトや詳細についてはIBC岩手放送「サイト規定」をご覧ください。

気象と防災 マメ知識!

気象予報士・防災士の神山 浩樹(IBCアナウンサー)がお届けする5分間。

◆放送日時
毎週土曜日17:50~17:55
番組開始:2009年4月〜

◆出演
神山浩樹(IBCアナウンサー)

お便り・お問い合わせ

609回「ダイヤモンドダスト」2021年1月16日OA

2021年01月16日 6:00 PM

今月9日、東北北部上空5000mに-44.5度と平年を10度以上、下回る強い寒気が入り、宮古市区界で氷点下24.1度まで下がるなど県内は、この冬一番の冷え込みとなりました。この日、各地からダイヤモンドダストに関するお便りが届きました。氷点下16.9度まで下がった紫波に住むオレンジペコちゃんからは、青空広がる中「朝、庭に出た主人が『キラキラしてきれいだよ』と声をかけてきました。ダイヤモンドダストだったでしょうか」。氷点下14.7度まで下がった北上に住む厚焼き玉子さんは「今朝は、朝日を浴びた時にダイヤモンドダストが見えたようにも思えました」と。ありがとうございます。

旭川地方気象台によりますと、ダイヤモンドダストは「風のない日に、空気中の水蒸気が凍って出来た非常に小さな氷の結晶がゆっくり落ちてくる現象です。氷の結晶が、ダイヤモンドの粉ようにきらきら輝いて見えることから名づけられました。明け方の気温が氷点下10度以下になる地域で見られる事があります」と解説しています。お便りをくださった各地の気象条件から、ダイヤモンドダストだった可能性があります。

さて北海道旭川市の北西にある幌加内町(ほろかないちょう)では、ダイヤモンドのような輝きは天使が囁いているようだということで「天使の囁き」と名付け、記念日を設けています。町によりますと「1902年(明治35年)、旭川市で日本最低気温の公式記録-41度を記録。しかし、その76年後、1978年(昭和53年)2月17日に、幌加内町母子里(もしり)でこれより0.2度低い-41.2度を記録しました。気象庁の公式記録の対象からはずれていたため、旭川の記録が公式記録になっていますが、実質的には幌加内町母子里の-41.2度が、誰もが認める日本一の最低気温となっており、2月17日はこの-41.2度を記録したことを記念し『天使の囁き記念日』として、日本記念日協会から正式に認定されています」ということです。母子里では毎年2月「天使の囁きを聴く集い」を開催、ダイヤモンドダストを見たり、寒さを体験したりして、マイナスイメージをプラスに変えていく試みを行っているそうです。ダイヤモンドダストを町おこしに利用している姿勢は、寒さ以上に情熱を感じました。

IBCラジオPR
IBCワイドFM

608回「日本海溝・千島海溝沿い巨大地震3」2021年1月9日OA

2021年01月09日 6:00 PM

東日本大震災の発生から9年半を迎えた去年9月、内閣府があるデータを公表しました。三陸沖から房総沖にかけての日本海溝沿いで巨大地震が発生した場合の津波の浸水想定です。マグニチュード9クラスの巨大地震に伴い、東日本の太平洋岸の広い範囲に津波が到達するとされていて、水門や防潮堤などのインフラが破壊された場合、県内の沿岸12市町村全てで広い範囲が浸水するとされています。今回の想定の検討にあたった、津波工学を専門とする東北大学の今村文彦教授は「同じような規模の地震が1600年代に起きていた可能性があり、400年前に起きている。400年というのが一つのサイクルである可能性があるので、実はそう遠くない状況でこの最大クラスの地震が起こる可能性がある」として、この巨大地震はいつ起きてもおかしくないと警鐘を鳴らしています。

津波が遡上する高さが29.7メートルで、県内で最も高い想定の宮古市。日本海溝版の浸水想定では、東日本大震災で被災しなかったエリアでも浸水するとされた場所が多くあります。その為、新たな浸水想定を書き加えた形でハザードマップを更新し、2月1日号の「広報みやこ」と共に配布するということです。策定した新たなハザードマップではこれまで指定していた避難場所のうち浸水の可能性のある箇所を削除。さらに高台に新たな避難場所を25か所指定しました。例えば津軽石川の河口にあたる赤前地区では、当初、赤前コミュニティ消防センターも避難場所に指定されていましたが、新たな浸水想定の公表で浸水する可能性があるということで、さらに高台にある赤前小学校に避難場所が統一されました。この他、市内中心部の宮古消防署前とつつじヶ丘公園の高台は、標高が高い小沢地区の2つの高台に変更される他、上村修道場付近の高台も廃止され、磯鶏小学校の高台が新たな避難場所となります。宮古市危機管理課の芳賀直樹危機管理監は「山に登りさえすればとりあえず命は守ることができますので、日本海溝の大きな地震が来ても犠牲者を出さないということを最大の目標に防災の活動を続けていきたい」としています。

一次避難場所だけではなく、更に安全な二次・三次避難場所も訓練で確認するなど、浸水エリアに関わらず逃げることが命を守ることに繋がります。

607回「防災拭い 新型コロナ編」2021年1月2日OA

2021年01月02日 6:00 PM

去年4月、この番組で取り上げた「防災拭い」に、新しく「新型コロナウイルス編」が加わりました。制作、販売しているのは、デザインを手掛ける滝沢市大釜にある有限会社「クワン」です。「防災拭い」とは、災害を防ぐ「防災」と日本古来の「手拭い」をかけた造語です。災害時に落ち着いて行動するための手順や防災情報を厳選し、わかりやすいイラスト付きで手拭いに印刷しています。大きさは縦34センチ、横幅は100センチ。よく見かける手拭いより10センチ長くなっています。2005年に「防災グッズ編」と「地震編」、その後、「津波編」などを全国で販売、累計販売枚数28万枚を超えた商品で、今回の「新型コロナウイルス編」はその第6弾となります。クワンでは、以前よりインフルエンザやノロウイルスなども災害と捉え感染症対策編を企画していたところ、新型コロナ感染が拡大したことから、本格的に制作を開始したということです。

この防災拭いは、左上には「クラスター(集団)感染発生のリスクを下げるため、3つの密の空間を避ける」とイラストと分かりやすい文章で描かれていて、その下には「日常生活の中でできる予防対策」として、人との間隔をできるだけ2m空けることや、こまめな換気など、8つの新しい生活様式の実践例が解説され、防災拭いの右側には「正しい手の洗い方」「正しいマスクの使い方」が描かれています。これらの情報は岩手医科大学附属病院の櫻井滋教授が監修しました。

「新型コロナウイルス編」は、県内の住宅メーカーが感染予防の取り組みとして、1月より来店者に配布することになったなど多くの反響があるとのことです。小野公司社長は、『軽量で薄いので、畳むとコンパクトになります。鞄に入れて毎日、持ち歩いてもかさばりません。いざという時には簡易マスクになります。更に洗っても色落ちせず、乾きやすいので、お手入れしやすく便利に使えます。冬はインフルエンザや風邪のリスクも高まりますので、感染症予防意識を高めるツールとして1人1枚、お持ちいただければ』と勧めています。1枚税込み550円で、取扱店など詳細はインターネット「防災拭い」で検索すると御覧になれます。

 

606回「日本の気候変動2020」2020年12月26日OA

2020年12月26日 6:00 PM

気象庁と文部科学省は、地球温暖化による将来の予測を「日本の気候変動2020」として取りまとめました。今世紀末の世界の平均気温について、温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」の目標を達成した場合の「2度上昇」、現時点を超える追加的な緩和策を取らなかった場合の「4度上昇」、この2つの想定を盛り込んでいます。

具体的に見てみると、世界の平均気温「2度上昇」では、日本の平均気温は1.4度上昇、北日本ではそれより高い1.5度上昇。1日の最高気温が35度以上の「猛暑日」は全国平均で2.8日増加、北日本では0.7日増加。夜間の最低気温が25度未満の「熱帯夜」は全国平均で9.0日増加、北日本の太平洋側で1.4日増加。最低気温が0度未満の「冬日」は全国平均で16.7日減少、北日本の太平洋側では19.2日減少する予測です。世界の平均気温「4度上昇」では、日本の平均気温は4.5度上昇、北日本の太平洋側ではそれより高く4.9度上昇。猛暑日は全国平均で19.1日増加、北日本の太平洋側では6.6日増加。熱帯夜は全国平均で40.6日増加、北日本の太平洋側では18.3日増加。冬日は全国平均で46.8日減少、北日本の太平洋側では62.8日減少する予測です。つまり猛暑日や熱帯夜はますます増え、冬日は減るのです。

降水に関しては、雨の降る日数は減少するものの、大雨や短時間強雨の発生頻度や強さは増加すると予測されています。1日の降水量が200ミリ以上の日数は「2度上昇」では1.5倍に増加、「4度上昇」で2.3倍に増加するという予測です。つまり激しい雨が増えるのです。又、地球温暖化に伴い、雪ではなく雨が増えることから、降雪量、積雪量共に「2度上昇」では現在の7割から8割弱に、「4度上昇」では現在の3割から4割に減る予測です。ただ気温の上昇により大気中の水蒸気量が増え降水量が増加します。そもそも雪が融けないような寒冷な地域であれば、大雪のリスクはあるとしています。そして水蒸気量増加は台風のエネルギー源が増えることに繋がるので、強い台風の割合が増加し、台風に伴う雨と風は強まりそうです。温暖化を緩やかにする為に、私たちの暮らしの中の省エネをより進めることが必要です。

 

605回「復興研究会が制作した絵本」2020年12月19日OA

2020年12月19日 6:00 PM

今日は大槌高校復興研究会の取り組みについてです。148名の生徒が学ぶ岩手県立大槌高校。2011年3月11日に起きた東日本大震災の津波は、高台にある校舎に続く坂のすぐ下まで押し寄せましたが被害を免れ、学校は震災当日の夜から8月上旬まで地域の避難所として利用されました。避難所運営に携わった経験などから、生徒は2013年、新たなまちづくりに貢献する為「復興研究会」を立ち上げました。部活と並行した活動で、毎年、復興過程を写真で記録するなど定点観測を行っています。その復興研究会では今年度、東日本大震災の教訓を絵本にまとめました。タイトルは「伝えたいこと あの日、私は小学2年生だった」。A4横72ページで、避難途中『見てはいけない』と視界を遮る大人たちの間から見えた津波に呑まれる町の光景や、避難した体育館でカーテンを布団代わりに寝た体験などが描かれていて、不安や悲しみが伝わってきます。又、地震の後の取るべき行動についてクイズ形式でも取り上げていて、震災を経験したからこそ伝えられる『未来の命を守りたい』という想いを発信しています。

制作に取り組んだのは、津波に追われながらも高台に避難して助かった当時小学2年生だった女子生徒3人です。その内の1人、大槌高校3年の佐々木結菜(ゆいな)さんに聞きました。昭和三陸津波の経験を親や祖父母たちから聞いた人が、今回の津波から逃げて助かったということを耳にし、『震災体験を伝承することで、正しい行動を取るきっかけになれば』と作成したということです。この絵本にはDVDが付属しています。美術部員の協力を得た絵の画像と共に、『文字だけより感情を込めた方が伝わると考えた』と、自分たちの声で文章を読み上げた約22分の音声が収録されています。

東日本大震災復興支援財団の助成を受け200冊印刷された絵本は、県内沿岸の70の小学校に寄贈した他、全国の学校や図書館などに配布しました。新型コロナウイルス感染症の影響で伝承機会が限られる中、今回の絵本は何度でも手軽に読めることで、新たな伝承ツールになっています。復興研究会顧問の松橋郁子先生は『月日が経つと記憶が薄れる中、生徒の体験談、気持ちの他、震災時、周りの大人たちがどう支えてきたかも理解していただければ』と被災地発の絵本の役割に期待を込めていました。

 

604回「虹と暈(かさ)」2020年12月12日OA

2020年12月12日 6:00 PM

虹は「太陽と反対側」に、空気中の「水滴」に当たった光により出現します。英語のレインボー、レイン=雨で作られたボー=弓は、現象をよく表しています。日光ではなく、稀に月の光によっても現れるようです。倉嶋厚著「季節ほのぼの事典」(東京堂出版)には、昭和8年7月4日に北海道の寿都(すっつ)測候所で夜の虹を観測した、という記述があります。「その夜は月齢が11.1の弓張り月だった。朝から晴れていたが、夜になると霧が現れ南東の強風とともに切れ切れに飛び、霧雨のように降った。月は夜の8時半ごろに南中し、次第に南西の空に移った。そのころ、北東の空に白い虹が淡く現れ、次第に濃くなった。虹の上の方は純白だったが内部は少し青かった」ということです。月光の虹とは、何とも神秘的な光景です。

虹と似た現象で「暈(かさ)」があります。漢字で日曜日の「日」の下に軍隊の「軍」と書きます。暈は虹と違い、「太陽と同じ方向」に現れ、空気中の「小さな氷の結晶」に当たった光により出現します。氷の結晶でできた薄い雲が広がっている時、その雲を通して太陽や月が見え、その周りに光の輪ができることがありますが、それが「日暈(ひがさ)」「月暈(つきがさ)」です。

さて盛岡のルンルンさんからお便りをいただきました。ありがとうございます。「11月27日午後4時半過ぎに近くのスーパーに出かけました。太陽が沈む前でしたがお天気も良く明るかったです。風もなく穏やかでした。でも虹がありました。輪になった方は消えていましたが、太陽を挟んで両側に虹の太い柱が立っていました。太陽と同じ側に虹があったのです。普通太陽と反対側に虹ができますよね。そしてお天気なのに。虹の上にはうろこ雲のような雲がありました。虹もくっきりでした。しばらく虹は消えませんでした。この現象をお聞きしたいです」。ルンルンさんが御覧になった現象は、太陽と同じ方向ということなので、虹ではなく日暈の一種で、しかも幻の日と書く「幻日(げんじつ)」と思われます。風もなく穏やかだったということから、氷の結晶が浮かびやすい条件だったのでしょう。幻日は、日暈の光の輪の、太陽の両側にあたる部分が特に光った現象です。珍しい自然現象を見られて、何か良いことがあるかもしれませんね。

 

603回「地震時計」2020年12月5日OA

2020年12月05日 6:00 PM

遠野の70代男性からお便りをいただきました。ありがとうございます。「小生が子どもの頃(昭和30年代)家に『地震時計』らしきものが貼ってあり、祖母が地震の度に『雨が降るぞ』とか言っていました。B4版ぐらいの紙に時計が書いてあり、文言は記憶していませんが祖母は『4・6の雨に・・・』とか言っていました。天気予報の歴史の一端にあるか気になりました。何だか富山の家庭の置き薬屋が紙風船とか一緒に配ったような気がします」とのことです。

盛岡市教育委員会事務局歴史文化課に問い合わせましたが、残念ながら地震時計そのものは所管する博物館施設にありませんでした。ただ地震の時刻で天気を予想する言い伝えは、県内の民族関連の書籍に記されていました。その内、岩手県教育委員会が昭和57年3月に発行した「岩手の俗信 第二集 天文気象に関する俗信」には、「地震による天気予察」という記述がありました。『往時、地震の事や天気の事等が不可思議であった事から、この間には何か関係があるかと推量し、次のような歌が生まれています』として、胆沢、江刺、釜石、東磐井、盛岡に伝わる『九は病、五、七が雨に四つ旱、六つ八つは風とこそ知れ(くはやまい、ごしちがあめによつひでり、むっつやつはかぜとこそしれ』と紹介しています。

これらの数字は昔の時刻の表し方です。日本芸術文化振興会「文化デジタルライブラリー 大衆芸能編 寄席」のHPでは、江戸時代の庶民の時刻の表し方について「午前0時が九つで、約2時間ごとに八つ(やつ)、七つと数が減り、四つ(よつ)まで行くと再び九つになります。9は1桁の中で一番大きい数字なので縁起がよいという考え方があり、九つから始まっています。本来、次はその2倍の18、その次は3倍の27なのですが、数字が大きくなって数えるのが大変なので10の位を取り除き八つ、七つと表しています」と解説しています。つまり先程の歌であれば、0時(九)に揺れが来れば病気がはやる前兆、8時(五)と4時(七)なら雨が降り、十時(四)は日照り、六時(六)と二時(八)に揺れれば大風の吹くしるしだ、と言うことです。これらは迷信ですが、先人の残した言葉に触れると、自然を理解しようという探究心は今も昔も変わらない、ということを実感します。

602回「台風の上陸ゼロか」2020年11月28日OA

2020年11月28日 6:00 PM

今年は台風が日本へ上陸していません。気象庁は1951年から台風に関する統計をとっています。台風の中心が北海道、本州、四国、九州の海岸線に達した場合を「上陸」、国内のいずれかの気象台などから300キロ以内に入った場合を「接近」、小さい島や半島を横切って短時間で再び海に出た場合は「通過」として扱っています。沖縄は台風の上陸とは言わず通過になります。台風の平年値である1981年~2010年の平均は、発生数が25.6個、接近数は11.4個、上陸数は2.7個。今年は11月16日現在、発生数22個、接近数7個、上陸数は0です。これまで上陸しなかった年は1984年、1986年、2000年、2008年で、このまま上陸しないと12年ぶりになります。

今年は1号の発生が5月12日と遅く、7月は統計史上初めて発生数がゼロでした。8月は7個発生しましたが、日本列島上空に太平洋高気圧が張り出し、台風は周縁部の風に流されて進路が日本の西よりになりやすい気圧配置でした。日本に接近した台風の内、9月の10号は気象庁が台風特別警報を予告しましたが上陸せず、九州西岸をかすめて朝鮮半島から大陸に向かいました。同じく9月の12号はオホーツク海から張り出した高気圧の影響で北上のペースが鈍り、その後は偏西風に流されました。10月の14号は大陸からの高気圧に北上を阻まれ、紀伊半島から東に進みました。今後、冬にかけて台風が発生したとしても偏西風が南下する為、日本に近づく前に東に進んだり、フィリピン近海で貿易風に乗ってインドネシア半島に向かったりする傾向があります。今後、発生する台風が上陸しないとは言い切れませんが、11月以降に上陸したのは1990年11月30日の28号だけということを考えると、台風が上陸しない年になる可能性が高いと言えます。

台風が上陸しなかったとしても、今年は大雨による被害が無かったというわけではありません。「令和2年7月豪雨」では、日本付近に停滞した梅雨前線の影響で西日本から東日本、東北地方の広い範囲で大雨となりました。特に4日から7日にかけて九州で記録的な雨量となり、球磨川など大河川で氾濫が相次ぎました。県内では11日から12日に種市で180ミリ、27日から28日に区界で177ミリと大雨となり、住宅や道路の被害が発生しました。豪雨災害は台風だけではない、ということを理解しておきましょう。

601回「小春」2020年11月21日OA

2020年11月21日 6:00 PM

陰暦10月の別名は前回お伝えした「時雨月」の他「小春月」という呼び方もあります。今日は「小春」についてです。11月は平地でも雪が降り出し、近づく冬の足音を実感しますが、そんな中にも、一時的に、穏やかに晴れて暖かくなる日があります。晩秋から初冬に、大陸から進んできた移動性高気圧に覆われ、まるで春を思わせるような暖かさになる日を「小春日和」と言います。

倉嶋厚著「季節おもしろ事典」(東京堂出版)には、小春日和のことをアメリカで『インディアン・サマー』と表現すると解説しています。アメリカ先住民が、思いがけず現れた暖かい日を利用して、冬ごもりの支度をしたり、南に移動するため平原に姿を現したりするため、とのこと。この言葉はヨーロッパにも伝わって用いられていて、日本の春や秋のように快適な気候のようです。しかしこぼれ話として、日本の気候学者が知らずに『インドの夏』と訳してしまったため、「外国の小春日和はよほど暑いのだろう」と誤解を生んだエピソードも紹介されています。同じく倉島厚著「季節つれづれ事典」(東京堂出版)には、小春日和に相当する各国の言葉として、ドイツ語の「老婦人の夏」、ロシア語の「女の夏」を挙げています。理由として「小春日和の青空の下、キラキラ光りながら飛ぶクモの糸が、白髪に見え女性を連想させた」という説は美しく、興味深い話です。

冬の季語「小春」は「春」の字が使われているため、「春先の暖かい日」のことと誤解されることがあります。文化庁が行っている国語に関する世論調査で「小春日和」について尋ねた際、本来の意味である「初冬の頃の穏やかで暖かな天気」と答えた人は51.7%、又、本来の意味とは異なる「春先の頃の穏やかで暖かな天気」と答えた人は41.7%と、僅差でした。年齢別に見ると「初冬の頃の穏やかで暖かな天気」と答えた人の割合は50~60代で他の年代より高く6割前後でした。一方、「春先の頃の穏やかで暖かな天気」と答えた人の割合は、16~19歳で66.1%、20代で54.5%と他の年代より高く5割を超えていました。言葉は変化していきますので、今後、本来の意味ではない「春先の暖かい日」に使う人の方が大勢を占める日が来るかもしれません。

600回「時雨」2020年11月14日OA

2020年11月14日 6:00 PM

旧暦10月、今年は現行暦で明日11月15日から始まります。旧暦10月の別名を時の雨と書く「時雨月」と言います。今日はこの「時雨」についてです。時雨は、晩秋から初冬にかけ、空が曇り、急にぱらぱらと降ってはやみ、数時間で通り過ぎてゆく雨のことです。広辞苑には「『過ぐる』から出た語で、通り雨の意」とあります。大陸からの寒気が日本海の海面で暖められ、積雲や積乱雲が次々と通る為に起こります。通り過ぎた雲と、次に来る雲の間に日光が差し込んでできる虹を「時雨虹」と言います。虹は太陽の光が斜めに差し込む朝や夕方に多いのですが、太陽高度が低い晩秋から初冬に南が晴れて北が降っているような時、日中でも北の空に虹が現れることがあります。夏の鮮やかな虹とは違う、淡い日差しでできる儚い虹です。通り雨の意味の他、細かく切ったショウガなどと一緒に煮たハマグリなどのつくだ煮である「時雨煮」の意味もあります。その語源は、時雨月のハマグリは味が良いという説があるようです。

時雨は昔から詩歌に最もよく詠まれた雨の一つのようです。平安の都、京都の北側を囲む山地から降る雨を「北山時雨」と呼ぶように、時雨といえば北山が有名です。厳しい冬が来る前に、降ったり照ったりする空模様と人生を重ね合わせたのでしょう。時雨は冬の季語です。種田山頭火の自由律の句「うしろすがたのしぐれてゆくか」。時雨が降る中をとぼとぼ歩み去って行く、わびしい後ろ姿を見つめるもう一人の自分を詠んだものです。時雨には小さな夜と書く「小夜(さよ)時雨」という言葉もあります。夜に降るしぐれのことです。志田野波(やば)の句「小夜しぐれ隣の臼は挽きやみぬ」。旅の宿で時雨が通り過ぎると、さっきまで聞こえていた近くの民家の石臼を挽く音はもう鳴り止んでいた、という静かな冬の夜の趣を表しています。

演歌には、都はるみさんの「大阪しぐれ」、同じく都はるみさんと岡千秋さんの「浪花恋しぐれ」のようにタイトルに使われている曲があります。大阪では、冬型の気圧配置になると日本海側の雨雲の一部が流れ込み、しぐれることがあります。その時雨の比喩的な意味である「涙ぐむ」を、人生の涙になぞらえたものと思われます。

もっと読む